解説
そのジェット機は炎上しながら学校に墜ちた…。
実際の事件を元に今の日本に問う感動の意欲作!

あの悲惨な沖縄戦から生き延びた沖縄県民は、今度こそ戦争のない平和な時代をと一生懸命働いた。その矢先の1959年6月30日、突然、嘉手納基地から飛び立った米軍のジェット戦闘機が石川市(現うるま市)へ墜落し民家を押しつぶしながら、宮森小学校へ炎上しながら激突した。住民6名、学童11名の尊い命を一瞬に奪う大惨事となった。そこはまるで生き地獄の有様だった。沖縄戦で多くの命を失った県民にとって戦後の子ども達は正に沖縄の希望の星であった。遺族をはじめ県民の嘆き悲しみは尽きることはなく52年たった今日まで続いている。この映画はその遺族・被害者たちの証言を元に制作され、今や沖縄だけではない日本人全体が抱える基地・外交問題などに大きな疑問投げかける久々の社会派ドラマである。

主人公良太には、誠実で思慮ある大人の風貌で定評ある名優長塚京三が沖縄の悲劇に挑み、良太の孫で大学生琉一を演じるのは「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズで淳之介を好演した須賀健太。その琉一の恋人加奈役には、2013年朝のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」でヒロインを射とめた能年玲奈が熱演。さらに第10回国民的美少女コンテスト演技部門賞を受賞した福田沙紀が色を添えている。また、数倍を越えるオーデションで選ばれた沖縄の子ども達をはじめ沖縄の映画演劇人も集結している。俊英の及川善弘が監督を担当。撮影監督は「葬式」「マルサ女」等伊丹十三作品を数多く手がけたベテランの前田米造。企画・製作には全国ヒット作の「アンダンテ稲の旋律」の桂壮三郎があたっている。 本作は、本土の映画人と沖縄県民が力を結集し沖縄復帰40年企画作品とし全国注視の中で製作された超話題作である。
ストーリー

激しい爆音とともに米軍のヘリが沖縄国際大学へ墜落した。事故現場を見た山城良太は、52年前の石川市(現うるま市)の空を思い出していた。良太は宮森小学生6年生で仲良しの、茂と豊と二年生の一平達と元気に遊び回っていた。新学期、担任の先生が転校生の宮城広子を紹介する。良太はほのかな恋心を抱いた。沖縄の青い空の下で、良太の家族も、一平の家族も、広子の家族も一生懸命に生きていた。1959年6月30日、突然、米軍のジェット戦闘機が墜落し炎上しながら宮森小学校へ激突した。悲鳴をあげながら逃げまどう子ども達、良太は広子を助けようとしたが、広子は大きな傷を負い息絶えていた。校庭には一平の変わり果てた姿があった。悲しむように花壇のひまわりが風に揺れていた。
それから53年目の2012年、年老いた良太(長塚京三)は妻を失い娘の世話を受けている。孫である大学生の琉一(須賀健太)はゼミ仲間と共に沖縄国際大学へリ墜落事件と宮森小ジェット戦闘機墜落事件をレポート活動を始めるが、頑なに事件の真相を語らない良太など、事件の傷跡は今も深く遺族の心を苦しめている。琉一はゼミ仲間と共に基地と平和を考えるピース・スカイコンサートを決意するが、恋人の加奈(能年玲奈)との不和など、コンサートを前に様々な問題が起きはじめる・・・
監督の言葉
<ひまわりの花に託して>
沖縄には哀しみがある。
それは長く長く続く、
負の歴史の中で背負わされてきたもの。
しかし、沖縄は諦めない。
俯かず、前を見据え、声を上げ、闘い続ける。
沖縄は音楽にあふれている。
唄、三線、カチャーシー、
人々の暮らしを支え、勇気づけてきた。
どこからか弦の音が響けば、
抗議のために振りかざした拳が、
波のように揺れ、踊りの手振りとなり、
フェンスの向こうを射貫く憤怒の表情が、
満面の笑顔に反転する。
とても濃い時間が流れ、
人たちがとても濃いやり取りを交わす。
私たちがどこかに置き忘れた、
ぬくい感情が丸ごと、今も息づいている。
映画『ひまわり』のラストシーンは、スクリーンいっぱいに咲き誇るひまわり畑です。 群生するひまわりたちはそれぞれに頭(こうべ)を上げ、眩しい太陽から少しも眼を逸らしません。 彼らは言葉こそ持ちませんが、その姿は私たちに強く語りかけてきます。願う明日がある のなら、決して諦めないで、と。高い壁に撥ね返されても、背中を押す誰かがいることを 信じて、と。ひまわりたちのその声を、私なりに受け止め、この映画の中に刻みつけたつもりです。多くの観客の方々に、いつまでも語り継いで 貰える作品となればと強く願っています。
監督 及川 善弘
制作日程
スタッフ一覧
[企画・製作] 桂 壮三郎(かつら そうざぶろう) プロフィール
2009年に現代日本が抱える「ひきもこり」問題や危機迫る食料自給率問題を描いた 劇映画「アンダンテ〜稲の旋律〜」を製作・企画。同作品でSARVH賞2010(年間最優秀プロデューサー賞)を受賞。ゴーゴービジュアル企画代表取締役。
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[監督] 及川 善弘(おいかわ よしひろ) プロフィール
1958年青森県生まれ。1982年に早稲田大学教育学部を卒業後にっかつ撮影所演出部に入り、加藤彰に師事。助監督として「ラブ・ゲームは終わらない」や「砂の上のロビンソン」に携わる。主な監督作品には「夏のページ」(90年)「「紅の拳銃」よ永遠に」(2000年)がある。日本映画監督協会会員、城西国際大学教員。
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[原案] 「石川・宮森ジェット機墜落事故証言集(石川・宮森630会編)」
[脚本] 大城 貞俊(おおしろ さだとし) プロフィール
1949年沖縄県生まれ。1972年に琉球大学法文学部国語国文学科卒業。開邦高校教諭、県立教育センター研究主事、県教育庁県立学校教育課指導主事を歴任。主な著書には『アトムたちの空』(講談社、第2回文の京文芸賞最優秀賞受賞)。2006年には第40回沖縄タイムス芸術選賞文学部門(小説)大賞授賞。『詩と詩論・貘』主宰。
[脚本] 山田 耕大(やまだ こうた) プロフィール
1954年愛知県生まれ。東京大学経済学部卒業。代表作には2000年「しあわせ家族計画」、2007年「マリと子犬の物語」、2008年「あの空をおぼえている」、2009年「アンダンテ〜稲の旋律〜」、2011年「死にゆく妻との旅路」など。大阪芸術大学客員教授。
[脚本協力] 宜野座 由子
[製作] 本村 初枝(もとむら はつえ)
[プロデューサー] 森田 勝政
[撮影監督] 前田 米造(J.S.C)(まえだ よねぞう) プロフィール
1935年生まれ。1984年に伊丹十三監督の「お葬式」で日本アカデミー賞優秀撮影賞受賞、翌1985年にも森田芳光監督の「それから」で日本アカデミー賞優秀撮影賞、山路ふみ子映画功労賞を受賞。1987年「マルサの女」、1988年「マルサの女2」、1992年「ミンボーの女」など伊丹十三監督作品を多く手掛けるほか、1990年「天と地と」(角川春樹監督)など日本を代表する撮影監督である。2007年に旭日小綬章を受章。